「中国資本で経営していると知られたくない日本企業は多い」日本の長寿企業を買いたがる中国人富豪が急増…その思惑とは
◆日本企業を狙う中国マネー…人気は「100年企業」
企業乗っ取りは国内だけで画策されているわけではない。
1990年代後半に中国ハルビン市郊外から来日し、長年不動産業を営む高橋氏(仮名・50代・帰化済み)によると、「中国人富豪からの『日本企業を買いたい』という相談が近年急増している」という。
「ビジネスチャンスだと思い、観光、グルメ、女性の接待つきで日本企業を案内するツアーを始めました。クルーズ船に乗り、船内で説明会を実施。風光明媚な地方都市で観光しながら、主に日本の製造業や古い飲み屋を案内する。そう簡単に話はまとまりませんが、成約すれば数千万円から数億円の手数料がもらえるのです」
中国人から見ると、「失われた30年」を経た今も100年前後存続する日本の中小企業は不思議な存在だという。
「匠の技とか腕を持つ製造業は特に人気。鄧小平の号令で花開いた改革開放路線でようやく今に繋がる企業が誕生し始めた中国では競争が激しく、淘汰の連続で100年企業など考えられないんです」
◆「事業継承など頭にはない」中国人顧客の目的とは?
高橋氏は当初、純粋に日本の優良企業を消滅させたくないという思いだったというが、中国人顧客の思いは違った。
「日本の伝統企業の看板、ブランドを手にし、資金を注入して値打ちを吊り上げて、別の中国人に売り飛ばすのが彼らの目的。事業継承など頭にはないのです」
高橋氏が仲介し成約させた例は十数社に及ぶが、社名を聞くと歯切れが悪くなった。
「すでに中国資本で経営していることを知られたくない日本企業が多いからです」
買収する側の中国人も同じ考えだ。
「たとえば、関西地方にある某部品メーカーは経営陣も社員もすべて日本人。代表取締役も、中国系投資家から送り込まれた肩書だけの日本人。実際に企業価値が上がらなくても経営内容を盛った資料をもとに、別の中国系に売り飛ばす。要は箱扱い。こういうケースは増えていくでしょう」
日本の伝統ある企業がマネーゲームの駒にされるとは遺憾極まりない。
◆雑な買い方でカモにされる中国人富豪も
チャイナマネーは繁華街の店舗にも触手を伸ばしている。飲食業界関係者が語る。
「今やチャイナスナック街として有名な大阪の某地域の飲み屋群。これも日本人オーナーの高齢化により、中国系不動産屋が現ナマで権利を買い取って経営しています」
また、’00年代に在日中国人が繁華街で多く開いた「日本風居酒屋」も高額で売買されている。だが、逆に「食い物」にされている例もあるとか。
「店内に池があって鯉が泳いでいるような店を中国のアホな成り金が買いたがるんですが、日本の繁華街のルールもヤクザも知らず適当に在日中国系のマネジャーに任せてカモられている。配当を待っているが一向に来ず、逆に追加の投資を求められたりしています」
心ない人々に奪われるか、潰してしまうか……経営者としてのジレンマかもしれない。
取材・文/週刊SPA!編集部
※4月8日発売の週刊SPA!特集「[日本企業乗っ取り]の最新手口」より
