約1億8000万年前の新種のプレシオサウルスの全身化石が発見される

ドイツ南部で約1億8000万年前の地層から、ほぼ完全な状態のプレシオサウルス属の新種の全身の化石が発見された。
プレシオサウルス属は、長い首を持つ首長竜、肉食性の海生爬虫類で、ジュラ紀から白亜紀まで生息していた。
全長約3mと、まだ成長過程にあったこのプレシオサウルスは「プレシオプテリス・ウィルディ(Plesiopterys wildi)」と名付けられた。
ジュラ紀前期にヨーロッパの海でプレシオサウルスたちは独自にそれぞれの進化を遂げていたのだ。
今回の発見は、地理的な隔たりの中でプレシオサウルス類がどのように多様化していったのかを示す重要な手がかりとなるという。
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全身が残されたプレシオサウルス類の新種の化石
2025年、ドイツ南部・バーデン=ヴュルテンベルク州のホルツマーデン近郊で、保存状態の非常に良い首長竜、プレシオサウルス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9]の化石が発見された。
標本番号は「MH 7」で、体長は約3mほど。「亜成体(成長途中の個体)」であったことが分かっている。
この地域に広がる「ポシドニア頁岩」は、ジュラ紀前期の海洋生物の化石が多く見つかることで知られている。
これまでこの地層では、魚竜(イクチオサウルス)や海棲ワニ類の化石が多く見つかっていたが、首長竜の完全な化石は珍しい。そのため、MH 7の発見は古代の生物多様性を探る上で重要な資料となっている。
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発見された種は「プレシオプテリス・ウィルディ(Plesiopterys wildi)」と名付けられた。

プレシオサウルス類の進化の手がかり
この研究を主導した、スウェーデン・ルンド大学の古生物学者ミゲル・マルクス博士によれば、今回の化石はプレシオサウルスの中でも「原始的な系統」に属し、後の時代に出現する「クリプトクリディド属[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%97%E3%83%88%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%89%E3%82%A5%E3%82%B9](Cryptoclididae)」へと進化していく過程を示しているという。
今回の標本は「フランコニアサウルス・ブレビスピヌス(Franconiasaurus brevispinus)」という別のプレシオサウルス属と近縁であることがわかった。
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この発見は、ジュラ紀前期のヨーロッパにおいて、地域ごとに異なるプレシオサウルスのグループが進化していた可能性を示している。

海の中で進化した地域独自の生態系
研究チームの一員で、ドイツの古爬虫類学者スヴェン・ザックス氏は、「プレシオサウルスたちはすでにジュラ紀前期には、それぞれの地域に適応した独自の特徴を持っていた」と語る。
これは、彼らがヨーロッパの内海で隔離された状態で進化していたことを意味する。
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このような地域ごとの隔たりが、プレシオサウルスたちの多様化や特殊化を促し、その後の時代に海洋を支配する爬虫類の基礎を築いたと考えられる。
MH7の発見により、これまで断片的だった首長竜の進化のパズルに新たなピースが加わった。
従来、ジュラ紀後期以降に大きく進化したとされていたプレシオサウルスが、実はもっと早い時期から進化の兆しを見せていたのだ。このことは、海洋生物の進化史に新たな視点を与えてくれるだろう。
研究チームは今後も、ヨーロッパ各地で発見された標本と比較することで、首長竜の系統樹や生態のさらなる解明を目指すという。
この研究成果は、科学誌『PeerJ Life and Environment[https://peerj.com/articles/18960/]』(2025年3月31日付)に掲載された。
追記:(2025/04/07)本文を一部訂正しました。
References: New plesiosaur discovery sheds light on early Jurassic evolution and plausible endemism[https://www.eurekalert.org/news-releases/1078626] / Peerj.com[https://peerj.com/articles/18960/]
本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。
