「日本の教育」は意外と高く評価されているが…たった一つ、とびぬけて“世界平均を超えてしまっていること”。財務省に改善を提言も一蹴
日本の教育はもう駄目だ――そんな声がある一方で、意外にも世界では高く評価されていることをご存じでしょうか。確かに山積する課題もあります。では、なかでも最も問題視されていることとは? 柴田巌氏の著書『未来をつくるインターナショナルスクール経営戦略』(プレジデント)を一部抜粋・再編集し、日本における国際教育の第一人者である坪谷・ニュウェル・郁子氏のインタビューから「日本の教育」を紐解いていきます。
世界的にみると評価が高い日本の教育
柴田
今後の日本においてどのような教育や人材が求められるとお考えでしょうか。いつもの坪谷節でお話しいただければと思うのですが。
坪谷
日本人は自虐的だから、メディアなどで「日本の教育なんかもう駄目だ」とボロクソに言う人がいるじゃないですか。でも、世界的に見ると、日本の教育はすごく高く評価されているんですよ。
まず基礎学力が高い。北海道から沖縄まで、みんな新聞を読めるし、おつりも数えられる。これは世界の中では割と稀なことで、新聞が読めない人とか、簡単な計算すらできない人が大勢います。そういった意味でも、日本は優れているところがいっぱいあると思います。
小学校の1クラス40人は多すぎる
坪谷
もちろん問題も多々あります。私は制度的な面で一番大きな問題点は、学級規模の大きさだと思います。1クラスの人数は世界平均では23人ぐらいです。だけど日本では約40人までOKとされています。授業はクラスの平均からプラス5%から10%ぐらいの子どもの学力を標準に教えることになっていますから、1クラス40人だと13%の子どもが落ちこぼれて、8.8%が発達障害でも何も対応できません。
これは学級規模が大きすぎるからなんです。だけど、学級規模をもっと小さくしてほしいということを提言すると、財務省が大反対です。でも私は「教育にお金をかける」というのは、一番真っ当な未来への投資だと思っているんですよ。この「未来への投資」という考え方が普及していけばいいのですが。
開成高校が1クラス50人でもうまくいくワケ
坪谷
よく議論になるのが、開成高校は1クラス50人だと。でもそれは地頭のレベルが高い生徒が集まっている開成だからですね。そういう環境なら50人学級でもうまくいくかもしれません。
でも、小学校であれだけの経済的バックグラウンドや社会的属性、それから学力的な違いがある中で、1クラスに40人もいたら、どんなに優秀な先生でも教えられないですよ。私は小学校という義務教育の過程でこそ、学級規模をもっと小さくしないと駄目だと思っています。それが日本の教育制度の中で一番の問題ではないでしょうか。
何から何までやらなくてはならない日本の先生
坪谷
2つ目は、柴田さんのスクールもそうだと思いますが、先生にとって一番の仕事は授業を設計して、それを生徒に教えることじゃないですか。だけど、実際には、先生が雑用から親のクレーム対応まで、何から何までやらなくてはならない。学校の事務員を増やそうにも、事務員が学校に1人しかいないのは、1人分しか人件費が下りないからですよ。
柴田
日本こそ教育に投資をしなければ、それ以外に投資の振り向け先がないと私も思っています。日本には資源も軍需産業もないので、人材や教育にもっと投資をしないと、日本の国力自体も先細りになっていくと思います。
今後おそらく人口対策としては、日本に住みたいという世界の人々をいかに増やしていくのかという移民の問題も出てくると思うのですが、そのときにはやっぱり教育がしっかりしていないと、どのような政策も実行できないと思います。
そういう観点からは、私はインターナショナルスクールという選択肢を示すことで、日本の教育にもいろんなあり方があるんだよという気づきのきっかけになればと思っています。
坪谷
私は外国人学校に関して、まず定義をつくることが必要と思っているんですよ。信じられないことに、日本には定義すらまだないんです。これは声を上げて、変えていかなくてはいけないと思っています。
柴田
本日はお忙しい中、ありがとうございました。これからも日本におけるグローバル人材の育成について、アドバイスをいただければ幸いです。
柴田 巌
株式会社Aoba-BBT
代表取締役社長
