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米国はレアアース資源を国内で確保するための投資を強化。特にMPマテリアルズへの出資を通じて、安全保障と経済成長を目指す。

(出典 Pixabay:LucasFZ70)


希土類元素 (レアアースからのリダイレクト)
希土類元素(きどるいげんそ、英: rare-earth elements・REE)またはレアアースは、31鉱種あるレアメタルの中の1鉱種で、スカンジウム 21Sc、イットリウム 39Yの2元素と、ランタン 57La からルテチウム 71Lu までの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である(…
44キロバイト (5,593 語) - 2025年7月11日 (金) 08:07

 

1. 米国防総省の動向

アメリカ合衆国は、国家の安全保障と経済成長を確保するために、レアアース資源の国内確保を目指しています。
特に米国防総省は、その戦略の一環として、国内のレアアース企業への投資を強化しています。
この動きは、MPマテリアルズという企業に対して顕著に表れています。
MPマテリアルズは、レアアースの採掘と加工を手掛ける企業として知られていますが、最近では米国防総省がこの企業に巨額の出資を行うことを発表し、注目を集めています。
国防総省が出資を決定した背景には、主に二つの理由があります。
まず一つは、米国の軍需産業において不可欠なF35戦闘機などに必要なレアアースを安定的かつ自国で供給する体制を築きたいという点です。
これにより、地政学的リスクを回避し、安定した資源供給を確保することが狙いです。
もう一つは、これまで依存度が高かった中国からの供給を減らし、政治的・経済的なリスクを軽減することです。
特に、近年の米中間の緊張関係を鑑みて、中国への依存度を下げることは喫緊の課題となっています。
これにより、国防総省は潜在的な筆頭株主となり、米国内でのレアアース供給の安定を図ろうとしています。
これからの動向に注目が集まる中、米国政府のレアアース戦略は国際社会にも大きな影響を与える可能性があります。

2. トランプ政権が描く資源戦略

トランプ政権は鉱物資源の確保を国家的優先事項とし、特にレアアースの調達に注力しています。1兆ドル規模の資源確保を目指す計画は、主に国内産業の強化と中国への依存度低減を狙ったものです。これにより、米国は国内での採掘・加工能力を高め、安定供給の体制を構築することを目指しています。

米国と中国はレアアースの分野で特に緊密な関係にあり、中国は世界のレアアース供給の約80%を占めています。これに対して、米国は脆弱性を感じており、自国での生産能力を高める動きをしています。この動きは、軍需品や高度技術製品の製造に不可欠なレアアースの安定供給を確保するためです。

トランプ政権はまた、不可欠な鉱物の採掘・加工における国際的な課題にも取り組んでいます。環境規制やコストの問題がある中で、いかにして持続可能な方法でこれらの資源を確保するかが課題となっています。オーストラリアやブラジルなど、他の国との協力も重要となってきています。アメリカの目標は、レアアースの脱中国化を進めるとともに、各国との戦略的パートナーシップを築くことで、国際的な市場への影響力を強めることです。

3. 豪州とブラジルのレアアース戦略

近年、レアアースの需要が高まりを見せる中、豪州とブラジルがそれぞれの戦略を刷新しつつあります。
豪州はレアアース大国となるべく、鉱物資源の生産能力を拡大し、外国資本の参入を積極的に受け入れる姿勢です。
これは脱中国の流れに沿った政策として、多くの国から注目を集めています。
政府は複数の鉱山開発プロジェクトを推進してサプライチェーンの強化を図り、将来的には世界市場での影響力を高めようとしています。
また、環境に配慮した採掘方法を進めることで、持続可能な資源開発を目指す取り組みが進行しています。
一方、ブラジルは豊富な天然資源を背景に、自国の経済成長を加速させる狙いです。
特にレアアース鉱山の開発を通じて、国際貿易の活性化や技術革新を推進し、持続可能な経済成長を目指しています。
政府の支援によるインフラ整備や新技術の導入を強化し、将来的には輸出を軸にした経済成長戦略を描いています。
さらに、インドは自国優先の方針を打ち出し、レアアースの輸出停止の可能性を示唆しています。
この動きが市場に与える影響は大きく、各国は新たな供給源の確保に奔走しています。

4. 中国からの脱却を目指して

豪州は、レアアースの供給における中国からの脱却を目指しています。
現在、世界のレアアース市場は大部分が中国に依存している状況ですが、変革の兆しが見えてきました。
特に、豪州はその豊富な資源を背景に、独自の供給ルートを構築しようとしています。
中国以外の国、特に米国や日本といった主要プレイヤーとの連携を強化し、新たな市場形成を図っています。
その一環として、豪州政府はレアアース産業への投資を増やし、国内企業の技術開発や採掘能力の向上を支援しています。
このような動きは、単に中国依存を減らすだけでなく、より安定した供給を可能にするための重要なステップとなります。
さらに、豪州と同様に他の国々もレアアースの自律的な供給体制の確立を進めており、これが新たな国際的な供給ネットワークを形成する可能性があります。
これにより、レアアース市場における競争が活性化し、資源の効率的な利用が促進されることが期待されています。
以上のように、豪州が目指す「脱中国」の道筋は、他国との協力を伴う国際的な取り組みであり、レアアース市場の未来において重要な役割を果たすでしょう。
これによって、安定した供給と新しい技術革新がもたらされ、世界中での産業発展に寄与することが期待されます。

5. まとめ

米国のレアアース戦略は、国防と技術の両面での重要性を増しています。
特に、米国防総省が国内レアアース企業への出資を決定し、防衛産業に必要な戦略資源の確保に力を入れていることは、今後の安全保障において重要なステップと言えます。
米国は中国への依存を減らし、自国内での生産能力を強化することで、軍需産業やハイテク製品の安定供給を目指しています。
また、アップルが5億ドルを投資し、レアアース磁石を米国内から調達する計画もその一環です。
この動きは、米国の経済的独立性を高めるだけでなく、国際市場での競争力を強化する鍵となります。
国際的には、オーストラリアやブラジルがレアアース大国として台頭を狙う一方、インドは自国優先政策を進めており、輸出を制限する動きが見られます。
これにより、国際市場の動向が一段と複雑化し、各国が自国の利益を最優先に考える競争が激化しそうです。
米国は、自国資源の確保が長期的な経済成長と国際的な影響力の維持に不可欠であると認識しており、外交や貿易政策にもそれが反映されています。
レアアースの戦略的管理は、将来の技術革新や環境問題の解決にもつながり、持続可能な発展に寄与する可能性があります。
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