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今年上半期、医療機関の倒産が35件に達し、前年を上回るペース。高騰するコストと診療報酬の不一致が影響し、特に病院の存続危機が深刻化。

(出典 Pixabay:sasint)


診療所のサムネイル
診療所は一般診療所として入院施設の有無により有床診療所と無床診療所に区分。そして、歯科診療所とに区分される。厚生労働省が調査した「医療施設動態調査」によれば、令和3年10月1日現在の数は、有床診療所が6,303施設、無床診療所が96,309施設、歯科診療所が67,874施設である。…
7キロバイト (1,062 語) - 2024年12月16日 (月) 16:56

 

1. 現在の医療機関倒産の状況

今年の上半期だけで全国で35の医療機関が倒産しており、この数は昨年度のペースを上回っています。信用調査の結果によると、昨年の年間倒産件数は過去最多の64件でしたが、今年もそのペースを追い越しそうです。

具体的な倒産の内訳としては、歯科医院が14件、診療所が12件、病院が9件で、特に病院の倒産が目立っています。この背景には、医療機器や人件費、入院患者の給食費、そして光熱費の高騰があります。一方で、診療報酬はこれらの上昇をカバーできておらず、収益が悪化していることが要因です。

さらに、診療所や歯科医院では経営者の高齢化が進行し、事業継続が難しくなるケースが増加しています。それに対し、病院は古くなった建物の問題に直面しています。法定耐用年数を超えた建物でありながら、新設のための資金を確保できず、存続が厳しい状況になっています。

帝国データバンクは、これまで小規模の事業者が主だった倒産が、中規模の病院にも影響を及ぼしていると指摘し、このままの傾向が続けば年間倒産件数は初めて70件を超える可能性があるとしています。このような現状は、医療業界全体に深刻な課題を投げかけています。

2. 倒産の背景にある要因

医療機関の倒産は、日本の医療システムにとって大きな問題として浮上しています。今年の上半期だけで全国で35件もの医療機関が倒産し、これは昨年の過去最多である64件を上回るペースです。倒産の背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、医療機器の価格や人件費が急激に高騰していることが挙げられます。医療機器は最先端の技術を必要とするため、価格が上昇し続けています。また、医療従事者の確保が難しく、その報酬が競争で上がっていることも、医療機関にとっては負担となっています。

さらに、診療報酬が医療費の上昇に対して十分に対応していないことが、経営を圧迫しています。特に、病院の運営には多くの固定費がかかります。入院患者に対する給食費や光熱費も同様に高騰しており、利益を圧迫する一因となっています。診療報酬がこれらの増加分を吸収しきれない場合、収益が悪化するのは避けられません。

また、事業継続が困難となっているもう一つの要因として、経営者の高齢化があります。診療所や歯科医院では、経営者が高齢化し、後継者が見つからないことから事業を継続できないケースが増加しています。

さらに、病院では建物の老朽化も問題となっています。法定耐用年数を超えた建物が増えており、建設費の高騰により新しい施設を建設できず、資金不足に陥っています。このため、多くの病院が存続の危機に直面しており、中規模病院にも影響が広まっています。

このままでは、年間の倒産件数が70件に達する可能性もあると言われています。この問題を解決するためには、医療機器費用の抑制や診療報酬の見直しだけでなく、医療業界全体での構造改革が求められています。

3. 医療業界の構造的課題

医療機関の倒産が近年増加している背景には、医療業界が抱える構造的な課題が存在しています。まず、診療報酬がコストの上昇スピードに追いついていないという問題があります。医療機関は医療機器や人件費、そして入院患者の給食費や光熱費が上昇する中で、診療報酬が思うように増額されていないため、収益が悪化しやすい状況にあります。

さらに、日本全国で小規模な診療所や歯科医院を経営する経営者の高齢化が進んでおり、その結果、事業を継続できなくなるケースが続発しています。多くの場合、後継者不足が原因で事業の引き継ぎが困難となり、閉院に追い込まれることが多いのです。特に診療所や歯科医院ではこの傾向が顕著です。

さらに、病院においては建物や施設が法定耐用年数を超えているだけでなく、建設費の高騰と資金不足のために新たな施設を建設する余裕がないため、存続が危ぶまれています。そのため、中規模の病院でも存続が危機に瀕しているといいます。

帝国データバンクによると、今後も医療機関の倒産が増える可能性があり、現行の医療システムを見直し、構造的な改革が必要とされているのです。診療報酬の適切な見直しや経営者の世代交代を促進するための支援策が求められる時期に来ているといえるでしょう。医療業界全体での抜本的な改革がなされなければ、患者にとっての医療アクセスが悪化する可能性は否めません。

4. 今後の見通しと対応策

今年の上半期に全国で倒産した医療機関は35件に達し、前年を上回るペースで増え続けています。このままでは倒産件数が年間70件に達する恐れがあり、中規模病院にも倒産の波が押し寄せています。

歯科医院や診療所の倒産の背景には、経営者の高齢化による事業継続の困難さが挙げられていますが、より深刻なのは病院の状況です。医療機器や人件費、さらには患者の給食費や光熱費が高騰する中で、診療報酬がこれらの上昇分をカバーできず、収益が圧迫されています。特に、施設建設費の高騰が大きな課題で、法定耐用年数を超えた建物の置き換えが進まないことで、存続の危機に瀕した医療施設が増加しています。

中規模病院の倒産が増える中、今後の見通しは決して楽観視できません。専門家は、医療機関の経営を支えるための具体的な支援策の必要性を指摘しています。例として、診療報酬の適正化や建設費の補助、または医療機器の購入に対する税制優遇などの政策改正が求められています。これらの対応策を講じなければ、地域医療に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

政府や関連機関が早急に行動を起こし、医療機関の倒産の悪循環を食い止めるための具体的な施策を打ち出すことが期待されます。地域の健康を守るために、持続可能な医療システムの構築が急務です。

まとめ

近年、医療機関の倒産件数が増加しており、今年の上半期には全国で35件の倒産が発生しました。
これは帝国データバンクの調査によれば、年間で64件の倒産となった昨年と比較してもペースが早く、過去最多を更新する恐れがあります。
倒産の具体的な事例を見ると、歯科医院で14件、診療所で12件、病院で9件と報告されており、特に今年は病院の倒産が顕著です。
倒産の主な原因には、医療費用の上昇と診療報酬の不一致があります。
具体的には、医療機器の価格の高騰や人件費、給食や光熱費の増加による経営圧迫が背景にあります。
このようなコストの増加に対し、診療報酬がそのカバーに至っていないことが収益を圧迫しているのです。
また、歯科や診療所では経営者の高齢化が深刻化し、事業継続が難しくなる事例が増加しています。
一方で、病院では建設費の高騰と資金難により、法定耐用年数を超えた施設の建て替えが進まず、存続の危機に瀕するケースが相次いで報告されています。
帝国データバンクは今後も倒産が増加する恐れがあるとし、中規模の病院に対しても影響が広がっていることを指摘しています。
このまま倒産が続けば、年間倒産件数が初めて70件を超える可能性も示唆されています。
このような状況を打開するためには、医療機関の構造的な問題に対策を講じる必要があります。
業界全体で協力し、持続可能な運営を目指す取り組みが急務です。
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